
アオアシ(1) (ビッグコミックス)
おすすめレベル:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ 星9
画力 :☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 星8
脚本 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ 星9
天才表現力 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ 星9
小林有吾先生によるビッグコミックスピリッツ連載のサッカー漫画です。
2020年7月12日現在、20巻まで発行されています。
ここ数年サッカー漫画が非常に熱い。
野球やサッカーといったメジャースポーツの漫画はそれこそ無数に出てくるのですが、それだけ競合が多いジャンルです。
その中でもこの【アオアシ】は現代サッカー漫画でトップクラスにおすすめしたい漫画なので是非紹介をご覧ください。
【こんな人にオススメ】
✅他のサッカー漫画とは違う視点の物語が見たい
✅主人公は一点に抜けた天才
✅専門的知識が覚えられる
✅フィーリングで描いていないのでサッカー経験者が共感できる
✅人間ドラマが面白い。心理描写が緻密で丁寧
【こんな人はオススメしない】
✅サッカーに興味がない
✅必殺技的要素がほしい
✅スピード感と躍動感に溢れたサッカー漫画が読みたい

記事を書く前に必ず漫画を読み返すのですが、鳥肌が立つシーンが本当に多いです。
アオアシはどんな漫画?
Jリーグユースを扱った漫画がほとんどないことからこの漫画の企画がスタート、実は作者の小林有吾先生はサッカー漫画に興味がなかったというから驚きです。
主人公は青井葦人(あおいあしと)中学弱小サッカー部のFWを担当。
個人技は拙いが、フィールドを見渡す視野とそれを活かしたボールへの嗅覚が武器。
その能力を東京シティ・エスペリオンFCの監督の福田達也に見出されユースセレクションを受けることになる。
✅青井葦人の特技が個人技でない
✅サッカー漫画で初めて見た展開
✅ヒロインが可愛い
✅青井葦人の物語である
✅躍動感よりも表現力のある絵
青井葦人の特技が個人技でない
主人公の特技が個人技ではないんです。
サッカー漫画の定番であれば、主人公は点を取るための【シュート力がすごい】【抜くためのイマジネーションがすごい】【司令塔としてのパスがすごい】などの特技がある方が漫画として表現しやすい。
【サッカー漫画のスゴイ主人公たち】
✅キャプテン翼の大空翼(おおぞらつばさ)
✅ファンタジスタの坂本轍平(さかもとてっぺい)
✅シュートの田仲俊彦(たなかとしひこ)
✅BE BLUES!〜青になれ〜の一条龍(いちじょうりゅう)
みんな主人公がすごいプレーヤーなんですよね。
わかりやすい能力を持っている。
でも【アオアシ】の青井葦人の特技は個人技ではなく【圧倒的な視野】なんです。

こちらは第1巻の冒頭シーンです。主人公は観客から見て1人でサッカーをしているように見えるプレーをしています。
ですが、それはボールが葦人に自然に集まるためそのように見えるということでした。
その後ユースの監督、福田達也との会話で理由が明かされます。

なんと、葦人はフィールド上の全員の位置を覚えていたのですね。
プレー中に平面な状況でまるで上空から俯瞰で見ているように全体を把握できる。
これが主人公青井葦人の能力です。
この特技を漫画的に落とし込んでいくのはかなり難しい。
ぱっと見てわかる能力ではないので表現に派手さがなくなるからです。
ですが【アオアシ】ではこの能力を活かして、試合の派手な演出展開よりも物語や心理描写に主軸を置き、ドラマで魅せてきます。
サッカー漫画で初めての展開
漫画って、自分のまったく想像していなかった展開が来ると思い切り引き込まれるんです。1つの漫画の中でこれがあるとその後もまず見続けてしまう。
一気にファンになってしまうんですよね。

漫画の醍醐味です。
この瞬間で一気にそのマンガの虜になります。
ポイントとしては1つの話を展開していって盛り上がる、ゲージが上がっていってマックスのところでドンッと仕掛ける。
物語を作る側としてはたまらないですね。
さて、【アオアシ】でもその展開があるのですが、どう表現しましょうか?
ネタバレなしでこれを表現するのは非常に難しいです。
ヒント:葦人は視野を活かしてFWとして成功していき、周りの評価も高まっていきます。しかしそこで福田達也に言われたことは・・・

内容は実際に見てからのお楽しみということで…
サッカー漫画として【アオアシ】は経験者にとっても思わずわかる!
という戦術の説明などが多く、それが漫画のリアリティーを引き上げてくれています。
勢いだけで物語が進行するわけではないのも【アオアシ】の魅力です。
ヒロインが可愛い

スポーツ漫画にヒロインは必須です。(個人的意見)
男だけで汗と青春をやると一気にストイックな雰囲気で満たされてしまいます。
アオアシのヒロインは一条花(いちじょうはな)福田達也の義理の妹。
ユースのセレクションで出会い、その後葦人を応援し続けてくれます。
直接的な言葉ではなく絵のみで心情を表現する場面が多い。
恋愛的な描写があるわけではないですが、ひたむきなヒロインというのは心つかまれる要素の1つだと思います。
花の応援する姿と試合での活躍が重なる描写でアオアシを盛り上げていることは、間違いないのです。
青井葦人の物語
キャラクターとして青井葦人は非常に魅力的、感情をストレートにぶつけながら
自分の弱い部分とも真摯に向き合う。
その中で能力が開花していく展開に読者は共感し、先が気になっていく。
ただ、他のキャラクターは一歩弱いような気がします。
それが良い悪いではなく、圧倒的に魅力のある葦人と同じだけの魅力あるキャラクターはまだ見つけられていない。
そのため物語は葦人が常に中心にいて、葦人の物語となる。
葦人のキャラクターとしての魅力が突き抜けているので【アオアシ】は成功している。
躍動感よりも表現力のある絵
結論から言うと躍動感のある絵というよりも物語を表現する絵が上手い。
人物絵や心理描写が非常に上手いため、【アオアシ】のテーマともマッチしており読みやすさへと繋がっている。
変な言い方ですが、ビッグコミックスピリッツらしい絵柄と進行だと僕は思います。
試合の演出と絵で魅せる場合、心理描写が多いと逆に疾走感がなくなることがある。
戦術や心理を見せながら進めるこの漫画には非常に適した絵柄だと言えます。

どっちのパターンも好きなのですが、テーマに合っているのが大事だと考えます。
まとめ
僕の漫画に対する評価の1つに予想を裏切るか?裏切りながら話としてまとめられるのか?というものがあります。
奇をてらうだけではその後の話の中で、それを入れる必要があったのか?
ということになり、そうならないために、最初からそれを入れる計画があったのかどうなのかにつきると考えます。
基本漫画家には二種類いて、最初から計画的に全ての辻褄をきちんと合わせるタイプと週刊連載の中でキャラクターの性格で動き出し、作者にもコントロールしきれないというスタイルがあります。
裏切る展開でなおかつ読者を惹きつけるには計画性を持っている漫画家だと僕は分析しています。
ちなみに【アオアシ】はもともと計画している漫画家の策略だと僕は言い切ります。

非常に素晴らしい話の展開なので是非ご覧くださいませ。
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